読書記録:不思議の国のアリス

概要

タイトル:不思議の国のアリス
作者:ルイス・キャロル

言わずと知れた、児童文学の名作。子供のころにももちろん読んだことはある。
本屋でふと目に付いたので、大人になった今読むとどう感じるか、と思い手に取ってみる。

感想

世界中で読まれている名作だが、改めて読んでみると、なぜ、世界中で読まれるほどの魅力があったのだろうか?と思わされた。
話の筋はほとんどないようなものだし、文体の面白さも原文で読むならともかく、翻訳された文章では、どうしても違和感の残る文章で、言葉の面白さにも触れやすいとは言えない。
作品の外の話では、作者のスキャンダラスな人生が死後、話題になったことや、ディズニーの影響などが大きいと思うが、作品の中に絞って考えてみる。

個人的に感じた本作の魅力は、作品の空白の大きさではないか。
この作品において、登場人物たちの心情はほとんど描かれることがなく、セリフや起こる出来事も前後の流れが唐突で、理由を理解できる出来事がない。
何をしているのかよく分からない、しかし、登場するキャラクターの見た目もセリフもインパクトがある。
子供心に、また大人であっても、このキャラクターは何を考えているのか?どうして、そんなことをするのか?とまさに読んでいる読者が不思議の連続を体験する。

強引と言ってもいい疑問の喚起は、これを読んだ創作者にとって、多くのインスピレーションを得られる機会になる。
そして、創作者の中に取り込まれたインスピレーションは、時にはパロディー、モチーフとなって、創造者の作る新しい創作物に取り込まれていったのではないか。
実際に、この作品は多くの創作物でパロディー、モチーフとして扱われている。
そうやって描かれていくことで、人から人へ、創作物から別の創作物へと形を変えて、多くの創作の源泉になったことが、世界中で愛される理由の一つだろうか。

その始まりは、作者が知人の少女に語り聞かせた物語であったという。幼い少女がなぜ、どうして、と何回も尋ねてくる中、ルイス・キャロルは物語を創っていったのではないかと想像できる。
そして、娘に与えたインスピレーションは、多くの子供と大人にとっても多大なインスピレーションを与えられ、また、自分にとってもなぜ?と無邪気に考えられる魅力の詰まった物語だったと思える。

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